2012年8月5日日曜日

石巻での漁業支援活動

遅くなりましたが、7月の石巻での活動報告を致します。
7/17(火)・18(水)の2日間、ボランティア団体「一般社団法人チーム王冠」にて、漁業支援の活動(牡蠣養殖の関連)をしました。
「漁業支援」と聞いた時、最初に頭に思い浮かんだのは、ネットでよく論争になっていることでした。「他所からやってきたボランティアがタダ働きして、地元の仕事を奪っている」と。

だから、正直、最初はとても気が重かったです。

しかし、「チーム王冠の人たちが、そんなことに気づかないはずがない、支援するにはきっと理由がある。まずは自分で現場を見て、それでも納得が行かなかったら、その段階で自分の行動を考え直そう」と考えました。
---------

お手伝いに行った先は、石巻市内の漁師さんのAさん(仮名)宅。

中心になっているのは、息子さん(30代?)で、そのお父さんと、近所の男性が地元の人。そこにボランティアの男性2名が加わり、その5名は主に海での作業でした。

陸での作業場には、地元の女性1人と、ボランティアが私を含めて女性2名。

Aさん宅のお母さんは、身内の方が入院するというので、病院に行ったりお孫さんの送り迎えの合間に、私たちの作業に加わりました。
私たちの作業は、牡蠣の種付けのための道具作りでした。
使うのは、ホタテの貝殻と針金(2m位)とゴム製の管です。ホタテの貝の真ん中にはすでに3ミリくらいの小さな穴が開けられています。
穴の開いた貝殻とゴムの管を、針金に交互に通して行きます。80枚程の貝殻を通して出来上がり。貝の間に管を入れるのは、卵を産みつける隙間を作るため。

これを、牡蠣の産卵のタイミングを見計らって、今だ!という日にいっせいに海に沈める。
すると牡蠣の卵がホタテの貝殻1枚の片面に200個位産みつけるそうな。これが、産卵より早く海に沈めてしまうと、貝殻が汚れて卵が産みつけられないとのこと。タイミングがとても大事とのお話でした。
やり出すと無我の境地になってとても楽しかったです。それに、海の仕事なのに作業場は畑のお隣で、緑もいっぱいで、たまに吹き抜ける風がとても気持ち良かった。

海で作業している男性陣とは時々こちらの作業場にやってきたり、お昼ご飯を一緒に食べたりしました。

そうした共同作業の中で、世間話のようにしてお互いのことをいろいろ話しました。
盛り上がったのは、方言の話題。「◯◯って言葉、わがる?」、「え~~、なんだろう?」、「ヒントはね・・・」とクイズのようになったりしました。
その家のお父さんが「標準語って、疲れんだよぉ~」と困り顔で思わず漏らした言葉にみんなで大笑いしたり、、、。

「確かに、私は地元の仕事を奪っているのかもしれない(だとしたら本当に申し訳ないけど)。
でも手作業したり一緒にお昼ご飯食べたりする中で、こうやって地元の人と外からやってきたボランティアが自然に会話ができるって、素晴らしい」、と思いました。

被災した人は、自分の経験したことを聞いてもらいたいと思っています。
それは自分の気持ちを吐き出すためでもありますが、それよりも、「こんな経験、誰にもして欲しくないんだ。救える命がたくさんあったんだ」ということがひしひしと伝わって来ます。


結果的に、やはり現場をきちんと見ないと分からないことがある、やらせてもらって良かったと思いました。
そして、2日間の活動を終えて、夜のミーティングで、当初の不安も含めて正直な自分の感想を述べました。

すると、代表の伊藤さんが丁寧に説明してくださいました。
「 元々は漁師と農家とは、それぞれの繁忙期には助け合ってやってきたが、震災以降は人が減ってしまいそれができなくなった。
今回杉崎さんたちが手伝った牡蠣養殖業のお宅は、地震で家が倒れて、船も漁具もすべて流されて、それでも『自分たちは被災者の中でも軽度なほうだから』と、1年以上もずっと周囲にSOSを出せずにいた。 
一見して被害がひどいところは、分かりやすいのでワーーっと支援が入るが、同じ浜でも支援状況がまったく違う。震災以降、絆、絆と言われるけど、元々あった地元の絆が、津波でボロボロになった。

『ボランティアが地元の仕事を奪っているのでは』というのも聞くし、既存のボランティア団体も皆、『営利に繋がることはダメ』って言う。

例えば、別な地域のワカメ漁で前に問題になったのは、他のボランティア団体は、『種付けはいい、それをやってすぐに利益に繋がるかどうかは確定していないから。しかし、収穫をボランティアが手伝うのはダメ。利益を生み出すことにボランティアを投入はできない』と言って、手伝いを断ってしまう。

しかしワカメ漁では収穫のタイミングを逃したら、ワカメは溶けてしまって売れない。

津波で漁具を流されてしまい、本来は収穫に直結するので中古の道具は使わないのだけれど、資金不足から中古の道具を手直ししたり、あらたに借金もして道具を買い足して、いよいよ収穫という時に、アルバイトを募集しても人が集まらない。収穫できない!というのが現実。

(震災によって人が亡くなってしまったのと、地元に仕事がないとか子供の通学の問題などで地元を離れたことによって、働き手が減ってしまった)

確かにボランティアが手伝うのはどうなんだ、という意見も分かる。でもここで手伝わなかったら震災後初めての収穫になるかならないかのタイミングを逃して、せっかくこの1年苦労して来たことが全部ダメになる。アルバイトが集まらないなら、困っている人がSOSを出しているなら、手伝う。俺はそういう考えです。」

これでもかなり短くしているのですが、伊藤さんが被災者の方を含む多くの人の話をよくよく聞き取って自分の目で確認していることは、非常によく分かります。

ボランティアの手が足りない中で、現場の状況を見極めて、困った人のSOSに応えようとしています。

 長くなってしまいうまくまとまらないのですが、ひとまず活動報告と致します。


記:杉崎 庸子

0 件のコメント:

コメントを投稿